New Economic War,　Goh Uozumi

Goh Uozumiが，「MOTアニュアル2020 - 透明な力たち」展で発表した作品の《New Economic War》について

Goh Uozumi
Feb 01, 2021 • 1 min read

Table of contents & Lang

概要

2020 年から 21 年にかけて，東京都現代美術館の「MOT アニュアル 2020 - 透明な力たち」展で発表された作品です．

展覧会のページはこちら 🡕

Video

translating…

仮想展示

\*表示されない場合はブラウザを再起動すると表示されます．この Webgl 関係の問題はタブを開きすぎるなど GPU 使用率が高くなりすぎると発生します．

作品について

自らが生きる世界に対して，我々はどれだけの裁量をもつのだろうか．
即ち，自分で自分のことを，自分たちで自分たちのことを判断して決めることが，この世界では可能かという問いである．

人間の文明は世界の深層にアクセスし続け，かつて質量を持たなかったものたちを資源として扱う技術を得ている．その運用によって，我々は新しく何かを得て，何かを犠牲にするのだろう．

我々は，何に，誰に，どのように，自らが規定されるのかを知ることができるだろうか．
それが万物の理法ではなく，我々がつくる人工物であったとして．

This work considers mass-less things such as human consciousness, thought, relationships with others, behavioral characteristics, and social institutions as New Resources, and explores the question of how the protocols for operating them, that is, the things that make up an economic system in the broad sense, will change the way the world works.

New Resources are invisible in their own right, and cannot be held and felt like oil or food. However, they create wealth, drive people’s will, and define society and the way we live.

今日の社会では，人間のあらゆるデータは機械学習の素材となり，その成果は人間の労働や判断を代替する方向に進んでいます．また今日の電子技術は，社会契約が不要の電子貨幣が象徴するように低いコストかつ高い自由度で報酬系を操作できる人間と社会の深層まで浸食し，ミクロにはインセンティヴ設計によって個人の選択を誘導し，マクロには米ドルを兵器とした世界支配のように他国を制御するための次世代の覇権闘争へと発展するでしょう．
日常的な例では，超効率的かつ大規模な監視システムは人々を潜在的に脅迫して思考様式を変え，ソーシャルメディアはユーザーの嗜好や人間関係などを解析して広告に利用し，情報世界の水面下での組織的な世論操作やサイバー攻撃は選挙に影響する大衆扇動や分断を行います．そもそも“民主的”に制定された投票方式や選挙制度自体によって権力を固定化するよう民意の意図的な偏りを作られていても，数理的公正さの真実に多数の人々が気付くことは困難です．
我々の意思決定の背後で動いているものはあまりに多く，複雑化し，不可視です．

それらの一見すると異なる，しかし社会的に利活用できるあらゆるものを「資源」と統一する視座から，世界の真実はどう見えるのでしょうか．
それは，あるがままの自然として受け入れるべきものなのでしょうか．

我々はこの世界に，これからの世界に，十分に主体的に参加できないのかもしれません．
自らの判断と意思決定による世界への関与というものが原理的に幻想だとしても，我々が手放してはならないもの，見定めなければならないものは何か．
迷路の中の鼠は，何を願いますか．